シリコンバレー コツコツコンサルタント日記

経営コンサルタンティング会社のシリコンバレーオフィスで働き、生活する中で生じた雑感。日米での仕事や組織、家族などについての考え事

フェデラーがウィンブルドンで見せた悔しさ

今年のウィンブルドンはちょうど子供の出産と重なって、リアルタイムではほとんど見れなかった。録画でフェデラーvsマレーの準決勝と、ジョコビッチvsフェデラーの決勝は観戦した。

準決勝のフェデラーは圧巻で、「(あらゆるタイトルを総なめし、無敵と言われた)全盛期に勝るサービス・パフォーマンス」と何人もの解説者にも、対戦相手のマレーにも言わしめた出来だった。痺れた。

それだけに、決勝の結果は残念だった。去年に続いて、あと一歩で世界ランク一位のジョコビッチに阻まれた。

残念な中、印象に残った記事がある

『もう十分に"史上最高"の立場を確立したんだから、負けてもそれほどの痛手ではないよね・・・といった思い込みをしてしまいがちだが、全くそうではなく、彼は今もジョコビッチと同じだけ勝利に飢えている』というハナシ。

表彰式で、ジョコビッチがトロフィーを掲げるのを直視できず、準優勝の盾を掲げることもしなかった。自分は優勝トロフィーを取りに来ているという自負だろうか。

実際、彼はトーナメント前に、「今年はウィンブルドンに向けて完璧な準備ができた」と名言していたし、全盛期のような勢いで相手を圧倒してきた。

そして彼の試合後の言葉、"I am still very hungry and motivated and a match like this is very helpful" 

去年も今年も、「最後のチャンスか」と言われ続けているが、まだまだ「伝説」そして「(西の)横綱」の役割を果たしてくれそうで、何より嬉しい。

 

フェデラー大好きで、こういう大勝負で負けるとテレビの前で泣いてしまう僕だが、彼の築く伝説をここ10年ほどずっと見ていて、最近興味を持っていること。

  • 歳を経るごとのフェデラーのモチベーションのレベルの維持と質の変遷
  • ここぞというときの勝負強さが(データとして)なくなっている理由あれこれ
  • テニス「28歳の壁」と、現在28歳のジョコビッチの「黄金期」の可能性

特に一つ目は非常に興味深いし、自分なりの考えをまとめてみるつもり。

あとあの奥さんは何者だとか、どうやったら双子二組ができるんだ、とかもう人間離れしている・・・

 

 

Jesse Pinkman as a "consultant"

(ネタバレ注意)

近年見た海外ドラマで、妻も僕も圧倒的にはまったのは、Breaking Bad

アメリカドラマの好きなところは、何年もシリーズが続いていくうちに、
キャラクターの人格が大きな成長や変化を遂げて、
どんどん感情移入が深まっていくところ。

このドラマは特に、主人公たちの人格の変化の描写が凄まじく、
最初から引き込まれ、そして、
心が痛すぎる最終シーズンの展開に至るまで、
キャラクターの人生に乗っかってしまった。

(主演の Bryan Cranston やキャストのインタビューもいくつか見たけど、
彼の役へのコミットメントがすごくて、更に好きになった)

好きなシーンもいくつのあるのですが、その中で、
コンサルタントとして、「わかるー!」と思ったのがこのシーン:

ジェシー、カルテルに指導する

ジェシーが、ボスのガスに連れられて、メキシコでカルテルのラボに、
ウォルトとジェシーの「製品」の作成方法を伝授しにいく場面。

しかし、ジェシーは化学について全くの素人。
ウォルトの元で作業は熟知しているものの、その元となる知識も応用力もない。
現に、作業工程の薬品の一つが準備されていないから、
「俺は○○って書いてあるバレルから取ってくるだけで、製法なんか知らないよ」
と慌てる。

こういう状況や精神状態は、仕事の上で非常に馴染み深く、
見ていて分かりすぎてお腹が痛くなるようだった。。。

初めての場所で、
自分がそれなりに知っているけど、深くまで知らないことについて、
その道の専門家に対して、
改善の提案や意見をする

このときの不安たるや。
相手(クライアントさん)の目は厳しいし、
この素人に何が分かる、と厳しく見ている (気がする)。

実際の仕事上では、いきなり初対面のクライアントさんに不躾に提案したり、
といったことは、もちろんありえないのだけど、
例えば、本社で採用した改善案を地方の事業所や工場で展開する、
といった場合には、これに似た場面というのは存在する気がする。

このときのジェシーの態度、見事だ。

自分が正しいんだ、という自信に自分の中で焦点を当ててこそできる。
あとの態度・表出自体はハッタリもあるけど、
心持ちは深い部分で自分が正しいと信じるもの("I know the right way to cook")に寄り添っている、気がする。

自分も似たような状況になれば、ぜひ思い出して自分の中の inner Jesse を呼び出したい、と思う。
(実際の口調とかはもちろん真似しないけど)

それはさておき、素晴らしすぎるドラマで、あまりドラマにはまらない自分も熱狂してしまった。

 


Phenylacetic acid - YouTube

ポテンシャル・組織の変化・意思決定

これまでの仕事や生活を通じて、自分もようやく、自分が物事を見るときによく使っている視点や、重要と思う価値観といったレンズが明確になってきたような気がする。

そういうことについての考えを書いていければと思っているんだけど、その中でいま意識しているキーワードを3つ、取り上げたい。

 

一つ目のキーワードは、「ポテンシャルの開花」

Performance = Potential - Interference (P = p - i) というのは、シンプルかつ深い考えで、自分にとってはすごくしっくりくるものがある。

いかに自分のポテンシャルを知り、大きくするか

出来る限り、結果を阻害する要因を取り除く・無効化するか

これまでに、自分が結果を出してきたこと、出なかったことを包括できるキレイな大枠で、かつ、本質を突いているような気がして、気に入っている。

個人のパフォーマンスだけでなく、組織のパフォーマンスを語る上でも適応できるのではないかな。

日本人や日本の組織の持つポテンシャルをどうやったら引き出せるか、
万能な解などない中で、使えるヒントを見つけたいというのは、一貫して思っている

The Inner Game of Tennis: The Classic Guide to the Mental Side of Peak Performance

The Inner Game of Tennis: The Classic Guide to the Mental Side of Peak Performance

 

二つ目のキーワードは、組織の変化

シリコンバレーにいて気づくのは、いかに企業の変化が大きく、構成する個人の流動性が高いか。大企業ばかり見ていても、驚かされることは多い。

スタートアップ環境にも影響されているが、大企業でも人が入ったり出たり、
会社を買ったり切り離したり、古い会社が新しいところに切り崩されたり。

それでも日々感じるのは、組織を変えることの難しさ。
一度育ってしまった組織は、その成功体験、組織文化、リソースの偏りなどの慣性があり、客船を旋回させるような力と時間を必要とする。

ましてや、外的変化の震源から遠く、同質性が高く、失敗しない意思決定や意思決定しないことに偏りがちな組織が変化することは、あまりにも難しい。

組織が大きな決断をして、成長・継続するために、如何に自身を変えていく意思決定をしていくか、それを後押し・阻害する要因はどういうもので、どう対処するのか。日本の組織との違いも考えながら、経験して考えていきたいと思う。

 

三つ目のキーワードは、意思決定

個人・組織の意思決定プロセスの奥深さというのは計り知れない。

自分自身の意思決定プロセスにも、意識的な要因から無意識的な要因まで、
複雑に入り組んでいて、完全に理解することは到底ムリ。

自分の場合、何度か大事な決断をする際に、紙に大事そうな評価軸を書いて、点数をつけて、加重平均したことがある。
しかし、それで決定に直結したことはありません。むしろ、直感的にしっくりくるかやどういう軸を無意識に大事にしているかの参考にするのに使っていた。

 

これらの3つのキーワード、重複する部分も大きいけど、その重複部分で、自分ならではの考えや貢献ができるように、意識していきたいと思っている。

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(写真は2008年、ウィンブルドンデビューした錦織選手を観戦したとき。
彼はそこから、長い道のりでしたけど、見事にポテンシャルを開花させているなぁ。)

 

シリコンバレーでのコンサルタント

コンサルタント」というのは何とも胡散臭い言葉で、意味が広すぎて、何の説明にもならない。

「経営コンサルティング会社」に勤務している、といえば、関わったことのある人は想像がつく。その中でも当然、会社によって千差万別。だけどそこは、自分自身の会社についてはよく知っているが、他社については働く知人・友人や聞いたことを経由でしか知らないので、詳しく知っている訳ではない。

そういう、ご存じのない方はご存じない、みたいな仕事であり会社なのだが、
ここシリコンバレーにおけるコンサルタントの立ち位置、みたいなものを簡単に、かつ至って主観的に、考えてみる。

自分の勤務先に入ってくるルートとしてよくあるのは、

  • 学部卒あるいは卒業して数年で入ってくる
  • PhDやMBAといった「肩書」の学位を取ってから入ってくる
  • 事業会社から転職

といった入り方が多い。

ちなみに、シリコンバレー(アメリカ全体はどうかわからない)にいて思うのは、女性の割合が日本より格段に高い。入ってくる半分以上が女性のときもある気がするし、また優秀である。
そこからの離職率も女性の方が高く、こちらでも、この業界で仕事・私生活を両方保っていくのは、男性も大変だが、女性にとっては極めて難しいのだと実感している。

上記の入り口、また、入社後の出口を考えると、このようになる:

学部卒

競合する選択肢で大きいのは、Google, Facebookといった(元はスタートアップだが)超大手のテック系企業や、それ以下様々なサイズのテック・ソフトウエア企業、スタートアップがある。もちろん、自身で起業するというのも含まれる。

そして、若くして入ってきた人たちが2-3年して行く先も、こういったテック企業の割合がすごく高い(気がする)。その他は、PEやVCといった投資会社といった新卒をほとんど取らない業界や、ノンプロフィット、MBAというところで、他の地域とさほど変わらない。

PhD・MBA・転職

PhDだと、当然アカデミアか働くか、というところなのだが、このあたりの大学だと、大学から起業する、といったことも珍しくないので、そういったオプションも含めて大学に残る、というパスと迷う人たちが多い。

MBAはまた違っていて、様々なパスがある中で、「コンサルに行きたい」という人が少々と、「まだ決まってないからとりあえずコンサルで数年修行して考えるわー」という人が安定している、といった感じだと思っている

こうして、ある程度キャリアや経験を積んで入ってくる人も、去る先はスタートアップがすごく多い。大きめの企業でマネジメントのポジションを得る人も一定数いるが、他の地域よりもスタートアップに転身する人の割合はかなり高いと思う。

 

辞める理由

よく理解できるし、そうだろうなと思うことであるけど、「スタートアップをする、スタートアップに行くのが格好いい」という風潮がある。また、今は割とバブルというか景気がいいので、スタートアップの資金の潤沢さが高く、給与水準がかなり高い(完全にこのあたりの狂気じみた家賃や生活費に反映されている)。

日本でも、「自分で何か事業をマネジしたい」という動機でコンサルタントから事業会社に移ったり、スタートアップに移る人も結構いるが、上記の流れなので、この理由で去る人の流動性が高い、つまり、あまりコンサルティングに未練なく辞めていく気がする。スタートアップがエクジットじたときの報酬を考えたら、金銭的にも遜色ないオプションだし(よりハイリスクで、ハイリターン)

また、これは自分としてもずっと向き合っていくテーマなのだが、「家族との時間をとるために」という理由が辞める理由の少なくとも一部を占め、それをはっきりと明言して辞めていく人が多い。
これは、出張が多すぎるという構造的な特徴があるので仕方ないのだが、外に同等に魅力的なオプションが多い、というのは関係しているだろう。

あと、アメリカの男性は家族のためにはキャリアチェンジも辞さないという考え方が強いようだ (家庭を優先するのは、母親よりも父親(アメリカではそうなりつつある))。信ぴょう性は分からないが、少なくとも身の回りにそういう考えの人は多いし、そういう考えで辞めていった人も多い。他のオプションも魅力的なので、別にキャリアを「犠牲」にしている訳では全くないと思うが。

この、コンサルタントを辞める動機や家族の点については、今後も何回も書くことがあると思う。

こういう、世界でも随一のスタートアップ文化・環境であるシリコンバレーなので、コンサルタントという仕事は、このあたりでは割と地に足の着いた職業と見られているのかもしれない。自分が当事者ではなくあくまでもアドバイザー、といった点はどこに行っても変わらなないにしても、プレッシャーやリスク・リターンといった観点でより「エクストリーム」なスタートアップのオプションがふんだんなので、そういった「アントレ気質」な層が薄いのかも。

そんなことを言いつつも、十分にスゴイと思う人が同僚に多いのは、そもそも集まってくる人材のレベルやタイプ、そして絶対数が他の場所とは違って多いということもあるだろう。多くの人が一度住んだら離れたくないというところなので、引きも強いのである。

 

あまり結論のない感じになってしまっているが、無理やりまとめると、

職業のオプションセットが他の地域と違い、よって人材プール自体も特徴的であり、数もレベルも高い気がする。選択肢も人材プールも多く、流動性も高い中にいるということで、コンサルティング業界も人の出入りは(そもそも激しいが)もっと多いことが予想される。

ということだろうか (あくまで個人的な憶測です)

「シリコンバレー歴」4年

シリコンバレーに来て、もうじき4年になる。

最初の2年は、スタンフォードMBA留学で。その後、勤務する経営コンサルティング会社のシリコンバレーオフィスに転籍(完全移籍)し、もうじき2年。

渡米してちょうど1年して長男が生まれ、次男の誕生をこの7月に控えている。

アメリカ生活は、8-14歳に中東部に住んでいたのと合計して、そろそろ10年。

グリーンカードも取得したので、とりあえずアメリカに住み続けるオプションはあるものの、子育て・仕事などで望むことや、自由にならないことなど、不確定要素が多すぎるので、今後はどうなるか、何とも言えないところである。

現在のシリコンバレーの生活は、自分にとってはなかなか心地よく、最高である。
留学で来てみるまではどんなところなのか、ロクに知らずに来て、どうせ2年で日本に帰るだろうと思ってきたけど、ここが如何に特殊でスゴイ場所か、生徒として、そして働いてみて、また父親としても、身を持って思い知る日々である。

また、外から日本を比較対象として見て、自分なりの視点で日本の会社や日本人についても考えること、思うことが増えてきた。

シリコンバレーにいて、自分の立場というのは割と珍しいかもしれない。
起業している訳でもスタートアップで働いている訳でもなく、個人コンサルでもない。
日本からの企業派遣でも駐在妻でもなく、引退しているわけでもない。
学生の時期はあったけど。

経営コンサルティング会社のコンサルタントとして、こちらの所謂「大企業」と主に仕事をしている。
そういう立場での経験から思うことを書いていこうと思う。

本ブログ中の意見はすべて個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係であります。